作品について/著者プロフィールと受賞歴
著者の経歴と文学賞受賞歴
1970年神奈川県生まれの原田ひ香さんは、大学で国文学を専攻し、秘書として働いた経験も持ちます。2005年に「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞、2007年に「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞を受賞し、本格作家デビューを果たしました。受賞歴があるというのは、私にとっては読みたくなる判断材料の一つです。
本作『ランチ酒』誕生の背景
主人公が就く「見守り屋」は、夜間を勤務時間として設定。昼休みのランチではなく夜勤明けに楽しむ“昼ごはん+酒”という独特の時間帯です。
著者は、昼飲み/ランチ酒をテーマに描きたく、実際に東京の昼から飲めるランチ営業店を回ったそうです。こうしたリアルな取材が、作品に説得力を与えています。
あらすじ|夜勤明けにひとときの「ランチ酒」
主人公・犬森祥子の現状
犬森祥子はバツイチで娘が1人。元夫、娘との関係性や自分の生活に心を振り回される中、旧友の亀山に誘われ、夜22時から朝5時まで「見守り屋」の仕事を始めます。依頼人との夜を様々な状況で過ごした後、ランチと酒で一日を終える。そんな日々の中で、少しずつ自分を見つめ直します。
見守り屋としての仕事と孤独な日常
見守り屋と聞くと「ただ寝ずについているだけ」との印象を抱きがちですが、結果的には依頼人の事情による人生の重みを受け止めざるを得ない重要な役割となっています。夜勤明けのランチ酒の場面では、仕事での緊張や人とのやり取りの余韻が残り、読者も自分ならどうするかと考えさせられます。
ランチ酒に込められた癒しと再出発
物語は大きな事件よりも、小さな出来事の積み重ねが中心です。ランチ酒を通じて祥子が「また歩き出せる」兆しを見せる瞬間が描かれます。私は普段お弁当持参なのですが、読みながら、「たまには少しだけ違うランチをしてみたい」と思わずにいられませんでした。
登場人物|主要キャラクターの紹介
犬森祥子(主人公)
見守り屋。離婚経験があり娘との関係に揺れる。食事と酒に触れる中で、迷いや悩みが描かれることで読者も自然に感情移入できます。
亀山(旧友)
祥子を見守り屋に誘った旧友で、頼れる存在。物語を支える安心感のある人物です。
依頼人たちとその他の関係者
眠れぬ夜を過ごす人々。子ども、ペット、独居老人などが登場し、祥子を通して支え合いや孤独の輪郭が浮かびます。
テーマ|日常の中にある「再生」「ひとり時間」「食と酒」
再出発と自己肯定感
祥子の過去、仕事、ランチ酒の時間が、「何かを失ったあとでもまた歩き出せる」というメッセージが感じられます。日常の、特別でもない瞬間の中にさりげなく再出発が描かれ、読後に心が軽くなる感覚を味わえました。
ひとりで過ごす時間の価値
ひとりで食事をし、酒を楽しむ時間は「自分の居場所」として肯定されるのではないでしょうか。
私は普段から、ひとりで外食をすることがほとんどないので(たまの飲み会の帰りにラーメンをすするとか、そんなレベル)、今度試してみたいと思うようになりました。
読者も自分自身の存在を見つめ直すきっかけを得られるでしょう。
食・酒・場所の三位一体の物語性
料理、酒、場所の三要素が緻密に描かれ、実在店を思わせる描写が読書体験をリアルに感じさせます。私も読みながら、実際に似たような体験を味わえるお店が職場周辺にないか、探してしまいました。
感想・評価|読者の声と私の視点
読者レビューから見える魅力
「お腹が空いた」「行った気分になる」「夜勤明けの女性の視点が新鮮」といったレビューが多く、見守り屋という設定が新しい視点を与えています。
私の読書体験
夜勤明けの場面で時間を忘れ、まるで自分もその空間にいるかのように没入しました。仕事明けのランチに至るまでの人物描写パートに心を揺さぶられながら、後半の食事パートでは、気持ちの動揺や浮き沈みを吹っ切るかのように、お店を選び、思うままに食事に没頭するさまは、わかりやすく、食の魅力を伝えます。が一方で、前半と後半部分について、融合する必要はありませんが、明確に分かれています。そこは、評価の分かれるところではないかと思います。
おすすめしたい人
夜勤やシフト勤務の人、ひとり時間を楽しみたい人、食事やお酒が好きな人に特におすすめです。読後は、自然と「一人で飲みに行きたい」という余韻が残ります。
まとめ|『ランチ酒』がくれるもの
本作が日常に提示するヒント
『ランチ酒』は、自分を癒すランチ+酒の時間を肯定してくれる作品です。派手ではないけれど丁寧な日常、誰かのそばにいることの意味、自分の時間を大切にすることの重要性を改めて教えてくれます。
読みたい人へのメッセージ
「日常がマンネリ」「仕事の後のご褒美的な何かが欲しい」と感じているなら、この一冊で“ひとり+こだわりぬいた食事+酒という選択肢”を取り入れてみてはいかがでしょうか。読書の余韻が生活に小さな彩りを添えてくれます。


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